1、はじめに
この記事は、TVerアドベントカレンダー20日目の記事です。
19日目の記事は@datahaikuninjaさんの「Pub/Sub で Worker Pool パターンを実装し、BigQuery リバース ETL ジョブの同時実行数を制御する」でした。
皆さん、こんにちは、 コネクテッドTV(以下 CTV)領域を中心に担当してきましたが、現在はアライアンス領域にも守備範囲を広げております、 井出と申します。 今年は、KDDIさんとのpovoのキャンペーンなども担当しておりました。
絶賛、「じゃあ、あんたが作ってみろよ」ロス(特に南川さんロス)でふらふらとキーボードを叩いています。
さ、気を取り直して書いていきます。
去年書いた記事はこちらです。
そもそも、CTVってなんやねんという方向けの補足は上にも記載ございますので、是非みてください。 あ、でも1つアップデートがありまして、PlayStation5®︎に対応しました!
TVer、PlayStation®5に対応開始 TVer初、ゲーム機にアプリが登場 | TVer INC.
入社当初の 2023 年から準備してきた案件で、個人的にも念願のリリースです。 ぜひ実際に触っていただき、フィードバックをいただけると嬉しいです。
2、今日は何の話を?
今日は少し視点を変えて、 PC・スマホ・テレビに続く “第4のスクリーン” とも言われる車載におけるエンタメ体験 について触れてみたいと思います。 後半では、TVer の CTV 戦略の現在地についてもご紹介します。 なお、車載領域の話は一般的な業界情報が中心で、TVer に特化した内容ではありませんのでご了承ください。
3、自動車に乗りながら、エンタメを楽しむには
① インフォテインメントシステムとは
インフォテインメントシステムは「Information(情報)」と「Entertainment(娯楽)」を統合した車載向けシステムで、 地図・車両状況の確認から、動画・音楽再生までを一体的に担います。 近年、自動車が 5G や車載 Wi-Fi などの高速・安定通信を備えるようになったことで、 “移動中の時間をどれだけ豊かにできるか” が車内UXの重要テーマ になっています。
② インフォテインメントシステムに関わるプレイヤー
車載エンタメは、以下のような多層構造で成り立っています。
- 自動車メーカー
- 車載システムを開発する企業(従来の Tier1 に相当)
- OS を提供する企業(Google Automotive OS / QNX / 独自 OS など)
- 動画ブラウザや再生エンジンを提供する企業
- 動画配信サービス
- 車載向けのアプリ配信・UX レイヤーを横断提供する企業(例:Xperi)
スマートフォンやテレビに比べ、関係者が多く、エコシステムが複雑なのが特徴です。
③-1 自動車メーカー
特に海外の自動車メーカー(例:BMW など)では、テレビチューナーの搭載が少ないこともあり、 YouTube や Netflix の視聴需要が早期から高かった と言われています。 また、自動車は「映像体験の場」である前に「安全に移動するための機械」であり、 動画視聴には家庭用デバイスにはない 厳格な安全要件 が存在します。
車載に特有の安全要件(一般論)
- 運転中の動画視聴制限(前席は停車中のみ許可、など)
- 走行中の操作制限(タッチ操作やメニュー階層の制約)
- 地域ごとの法規制(欧州 UN-R、北米 FMVSS など)
- UI の文字サイズや視認性要件
- クラッシュ時のフェイルセーフ(アプリが固まらないこと)
これらは、自動車メーカーが最も慎重に対応する領域です。
③-2 車載システム開発会社
Bosch、Continental、Harman、Panasonic Automotive、Desay SV などが代表的です。 メーカー単位、時には車種単位で契約し、車載システムの開発を担っています。
③-3 OSベンダー
車載OSには多様な選択肢があります。
- Google Automotive OS(GAOS)
- BlackBerry QNX
- 自動車メーカーが独自に構築した OS
興味深いのは、 「OSはGAOSだが、アプリストアは自動車メーカーの独自運営」 といったケースが多い点です。 また、LG が WebOS ベースの車載プラットフォームを開始するなど、多極化が進んでいます。
LG Vehicle Solution | LG Mobility
③-4 動画ブラウザ
車載で多く使われる再生エンジンは以下です。
しかし、家庭用ブラウザと比べて制約が大きいのが特徴です。 車載ブラウザの主な制約
動画サービス側は、これらを踏まえて再生システムを最適化する必要があります。
③-5 その他横断提供ベンダー
例として Xperi のように、 「アプリ配信管理」「DRM」「レコメンド」「番組メタデータ」など、 エンタメ領域をまとめて自動車メーカーに提供する企業も存在します。
4、動画配信サービスは車載に展開するには?
インフォテインメントシステム上にサービス展開するためには、大きく2つのやり方があります。
①ネイティブアプリでの展開
Google Automotive OS が広がり、 YouTube や Prime Video などがネイティブアプリを提供し始めています。 ただし、車載アプリは 審査が非常に重く、期間も長い のが特徴です。
車載アプリ審査で見られるポイント(一般論)
- 運転中の操作・視聴の制御が正しいか
- UI の視認性・フォーカス遷移
- メモリ使用量・クラッシュ耐性
- 起動時間・復帰時間
- 映像/音声が走行中に不具合を起こさないか
家庭用CTVの審査とはレベルが異なります。
②ブラウザベースでの展開
多くのサービスは、車載ブラウザでの展開が主流です。
- 車載向けに最適化した CTV アプリを流用 するパターン
- PC/タブレット向け UI を調整 するパターン
など様々な形があります。 ブラウザ対応は柔軟ですが、DRM/帯域/制約に応じたチューニングが必要です。
5、車載特有のネットワーク事情
車載ネットワークは、家庭用環境より 圧倒的に不安定 です。
ネットワークの特徴としては以下があげられます。
OTT 側で必要な工夫としては以下が考えられます。
車載では、安定して“止まらず見られる”ことが最重要 になります。
6、車載エンタメの代表的なユースケース
現時点で特に多い利用シーンは、以下の3つです。
後席キッズ視聴
アニメや子ども向け番組の需要が高く、車載エンタメの王道ともいえる利用ケース。長距離移動・渋滞時の視聴(一時停車中)
家族利用が中心で、テレビ的な「ながら視聴」に近い使われ方。
- 停車中のパーキングエンタメ
北米・中国を中心に伸びている領域で、休憩中に動画や音楽を楽しむ利用が増加。
日本では 後席の子ども向け利用(1) と 長距離移動中の利用(2) が特に強く、 海外は 停車中のエンタメ(3) の伸びが顕著と言われています。
7、車載エンタメの今後
自動運転時代の車内UXは、未来像として、 以下のような構想が議論されています。
- 車内全体がディスプレイ化
- AR HUD に映像や案内を重ねる
- 視聴しているコンテンツに応じた移動体験の連動
- 座席ポジションに合わせた画面補正
- “移動×メディア視聴” を前提とした広告 UX
車内が「第3の居住空間」へ変わっていく中で、 動画サービスの役割はますます重要になっていく領域です。
8、TVerのCTV状況
スマートテレビで11社、ストリーミングメディアプレイヤーで2社、プロジェクターで3社、セットトップボックスで3社 が昨年時点での状況でしたが、PS5®についに対応し、ゲーム機領域にも参入できました。
この記事をご覧になっている方々のお持ちのデバイスも、もしかしたら、対応しているかもしれません。 ぜひ、TVerをCTVデバイスでお楽しみください!
②TVerにおけるCTVの立ち位置のその後
リリース当初 1.9% ほどだった CTV のデバイス別再生割合は、 2023年1月には 31%、現在は 約38% にまで伸長しています。
【TVer】2024年度の動向をまとめた「数字で見るTVer広告」発表 | 株式会社TVerのプレスリリース
TVerを使う3人に1人以上は、CTVを利用して、視聴しているということになります。
また、再生数も、
11月に過去最高の1.9億回を突破しました。 再生数も増加しており、2億回に迫る勢いです。
9、おわりに
私自身、仕事を通じてエンドユーザーにより良い体験を届けることを大切にしています。 CTV に加えて幅広い領域に携われるようになり、新たな挑戦に日々やりがいを感じています。 現在、TVerでは一緒に働いてくださる仲間を募集しています。 ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。 また別のテーマで記事を書ければと思います。 今後とも TVer をよろしくお願いいたします!
次回は @togoeさんの「デザインシステムを「1から作り直したけど撤退した話」〜TVerデザインシステムV2お蔵入りから学んだこと〜」です。お楽しみに!!!